新・駅長日誌Ⅱ

…久し振りにこのカテゴリーで記事を書く事になりました。
鉄道部屋を整備してる中で、室内の掲示物として古い鉄道地図が
欲しくなり、ヤフオクで探してみましたクラ駅長です。

イメージとしては客車内の妻面に貼ってある、時刻表の索引地図
みたいな物で、昭和30年代辺りのが良かったんですが、そう都合
よく出物があるワケもなく、代わりに見つけたのが昭和15年発行の
「参拝の栞（しおり）」と言う物です。

…コレがなかなか面白そうなのと、送料込みで900円程度と言う安価
だったので、即決で買ってみました。



昭和15年と言うのは、神武天皇が橿原宮で即位して2,600年目に
相当すると言われた「皇紀二千六百年」に相当し、国家神道の
時代だから各地で大規模な祝賀行事が行われた年のようです。

このパンフレットもそんな時代の中、関西各地の神社への参詣
旅行向けに作られた物なのでしょう。…一枚物で、大きさはA3と
B4の間ぐらいの物です。

コレが1/16に折り畳んだ状態がデフォルトのようです。表紙に相当
する部分に奈良県の橿原神宮の写真があり、片面が各地の神社
や観光名所などの簡単な解説書きになっていました。



そして反対側が地図ですね。「近畿交通図」と言うタイトルで鉄道や
バスの路線図が載ってますが、近鉄電車の路線図みたいな感じで
紀伊半島と伊勢付近を誇張したイビツな形の物です。

…そのままでは見難い＆掲示も難しいので、まずデジタルスキャナ
で読み込んで、紙の変色などを補正した物を作りました。

昭和15年だから現在の路線図とはカナリ違うんですが、見てると
なかなか面白いので細部を小分けして幾つか紹介してみましょう。



まず地元の奈良県からですが、国鉄線と後の近鉄に相当する各種
の私鉄線は概ね今と変わらない感じです。このパンフレットの表紙
にもなってた橿原神宮は、殊更大きな文字で書かれてますね。

時代を感じるのは新法隆寺～天理の天理軽便鉄道、新王寺～
桜井の大和鉄道、畝傍～橿原神宮の小房線（大阪電気軌道）
などでしょうか？

天理軽便鉄道と大和鉄道は、双方とも戦争末期に不要不急路線
として半分が休止され、復活する事なく現在に至っています。

八木駅付近の短絡線は京伊特急が走る北側のは存在せず、南側
のみが確認出来ます。当時は上本町から大阪線経由で橿原神宮前
まで走る列車が存在したんですよ。

橿原神宮と並んで人気が高かったと思われるのが、伊勢神宮の
周辺でしょう。大正～昭和戦前頃は鉄道網が今より充実しています。

現在の近鉄大阪線～山田線に相当する区間とは別に、名古屋線
の江戸橋で分岐して新松阪を経て大神宮前と言う駅までの路線が
あり、コレが当時は伊勢電気鉄道と言う社名の路線でした。

また宇治山田周辺には「神都電車」と呼ばれた路面電車や、朝熊山
へ登るケーブルカーなどもあり、コレまた正確に描かれています。



大阪～和歌山にかけてを見ると、まだ大阪環状線は存在しません。
東半分の「城東線」のみが描かれています（西成線はナイのか？）。

現在の阪和線はまだ「阪和電気鉄道」と言う私鉄だったので、他の
私鉄線と同じ赤色で描かれています。…同路線はコノ昭和15年12月
に南海電鉄に買収され、昭和19年に国有化されました。

和歌山から西の紀伊水道付近で紫色に塗られた部分は「軍機保護
法施行地域／要塞地帯」と書いてあります。また欄外でコノ地図
自体が由良要塞司令部の検閲済みであるとされており、やはり
「時代だな」と感じる所でした。

紀勢本線はコノ当時、尾鷲～新宮が未開通でバス連絡の扱いに
なっています。

また割愛しましたが西側の江住～串本も未開通です。
現在のように紀伊半島を一周する形が出来るのは、昭和30年代に
入ってからなのですよ。



最後に京阪間～琵琶湖方面ですが、現在の阪急京都線が「新京阪
電車」と言う京阪系列の会社になってたり、愛宕山の電車とケーブル
カーも描いてあったり。琵琶湖周辺は、やはり湖西線がなく代わり
に近江今津まで江若鉄道が載ってます。

この地域は個人的に不案内ではありますが、話としてしか知らない
所も路線図があると、一気に分かりやすくなるのが面白い所だと
思いました。

…枚方の「菊人形」が名所に描いてあるのは笑えますが。アレは
当時とて秋の限られた期間だけの物だったでしょうに。

今後の展開としてこの地図は鉄道部屋に掲示するのと、古い時刻表
も幾つか入手してネタを拾ってみる事にしたいと思ってます。

…恐らくかなりマニアックな話になりますが、適当にお楽しみに。

※→次回に続く

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